A.I.(ARTIFICIAL INTELLIGENCE)

A.I.

2001年・アメリカ映画

いまだに惜しまれるのは、キューブリック監督がこの作品を撮らなかったこと。私の知り合いの人によると、彼はこの作品に異常なまでに入れ込んでいたらしい。

だからこそ、よけいに残念でならないのは・・・

  • 悪魔的な視線が備わっていないこと。
  • キューブリックの、あの芸術にも近い「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」の悪魔的魅力が、この映画には全く出ていないこと。

だから、A.I.の少年が、救いようもなく悲しいキャラとなってしまう。

どんなにスピルバーグ監督が、「もう僕はピーターパンじゃないんだよ。大人の映画を作れるんだよ」とがんばっても、子供の純粋な心を持った少年が作った、胸が詰まる作品になってしまう。

すべてが悲劇。

小さい頃に、スピルバーグピノキオで泣いた気持ちが、そのまま。人魚姫で泣いた気持ちがそのまま。

童話のもつ悲劇の、救いようのなさが、そのままこの映画に現れているのです。

彼の素晴らしさは、感動をそのまま表現できること。でも、この映画で、彼は無理に大人になった(?)視線で「悲劇から目を背けよう」としているから、よけいに救いがなくなってしまうのです。

この映画でぼろぼろ泣きました。でも、感動したから泣いたわけじゃない。あまりにも辛くて泣いたのです。

「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」は、怖くても、不快になっても、何度も観たい映画です。でも、この映画は、二度と観たくない映画です。